公益社団法人 青森青年会議所

理事長所信 第72代理事長 関 貴光

スローガン

関貴光(青森青年会議所第72代理事長)

 はじめに

私が生まれ育った地域は雄大な自然に囲まれており、幼少期の頃はいつも時間を忘れ自然と触れ合いながら元気に遊び回っていました。それから二十数年が経ち自分が親となった今、自然の中で遊ぶ子どもたちの姿を見ていると自分の幼少期の頃を思いだし改めてこのまちに生まれて良かったと感じます。
その地域は「坂のあるまち」ともいわれており、かつては傾斜地を利活用したスキー場があり、県内初のスキー講習会がおこなわれるなどスキーの普及に大きな役割を果たした場所でもあり、数十年で大きな発展を遂げてきました。さらに、私が住まう地域では自然を活かし四季に合わせた行事が数多くおこなわれてきており、住民が一つとなり長年住民の手によってまちの活性化が図られ、地域単位での文化や歴史の継承、そして自然を次代へと受け継いでいくという気概を持って活発な活動がおこなわれていました。
しかし、残念なことに最近では、未来を担う若い人がいない。何をやるにも負担が大きい。誰かがやってくれる。人が集まらない。など多くの課題ばかりを耳にするようになりました。例えば3年前の2019年には高齢化が進んでいることや、囃子方で参加していた子どもたちの減少を理由に数十年おこなわれていた地域ねぶたの運行を断念することとなりました。私自身、続けるか止めるかと協議された会議の場にいたのですが、地域の方の続けることが出来ないという意見を受けどうすることもなく私もその当時は諦めざるを得ない状況でした。
このように私が住まう地域で起きている現象は、他地域も同じような状況となってきており、今後は地域単位の活性化が失われ最終的には青森市まち全体が大きく衰退すると考えます。


まちに必要なもの

東北活性化研究センターによると、「今後も⼈⼝の減少と過疎化の進⾏に伴い、様々な地域課題が顕在化するとともに、新たな地域課題が発⽣。⼀⽅、地域コミュニティの機能も低下傾向にあり、課題解決への対応は困難」という調査研究の報告も挙げられており、今後は地域に多くある活動が縮小されてくると共に、地域の継続的な取り組みをおこなうことは困難な状況になると考えます。

こうした事態を、各地域でおこなわれてきた物事が少しずつ収縮することや、事業などが消化されているだけだと捉えてはいけません。弊害として市民が地域の活動に参加する機会が減少し、人と人との交流の場が無くなります。さらには地域のつながりが無くなることでまちの担い手不足がさらに深刻化するという原因になり、今後まち全体が暗く落ち込み衰退の一途を辿ることになる大きな問題として捉えなければなりません。

また、まちの活気がなく暗く落ち込むふるさとに若者は魅力を感じることが出来るはずもなく、自らが生まれ育ったまちを離れていきます。しかし、未来のまちには次代を担う人財が不可欠です。暗く落ち込んでしまったまちを目の当たりにして、どうにかしなければいけないと感じてまちのために活動することが出来る人財を一人でも多く増やしていく必要があり、地域のためを想う青年世代が笑顔で前を向いて進んでいかなければなりません。笑顔は人から人へ伝播し更なる笑顔の輪を生み出します。地域コミュニティの希薄化が進むこのような時代だからこそ、希望に満ち溢れた笑顔が必要です。また、若い世代の笑顔は力となり、同じ志をもった人財を集めていきます。そしてそこには、地域の未来を想い描きながら行動をおこしていける環境となります。若い世代が失敗を恐れず挑戦するその姿は周りに影響を与えまち全体を巻き込む大きな運動となります。その運動は今後起こりうる地域間においての様々な課題にも臆することなく立ち向う力となり、まち全体に挑戦の輪として広がることで、各地で未来を担う人財が溢れかえり、笑顔溢れるまちへつながると、私はそう確信しております。


まちに必要とされる組織

青森青年会議所は2021年に70周年を迎え2022年からVision70として動き出し「市民が共感する魅力を創造することを誓う」という使命のもとスタート1年目を切りました。青森青年会議所は、1951年にふるさと青森市をより良くすべく、志を持った青年により設立され長きに亘って地域から愛され、そして守り続けられてきました。

時代が大きく変わったことは確かですが、青年世代がまちのために集い運動を展開してきたことは今も昔も変わらないことです。現代においても我々は、青年らしく若さという武器をもち、明るい豊かな社会の実現のために運動を展開し続けています。

しかし、いつの時代においても地域社会から期待を寄せられたのは、ただ若いだけではなく、青年を象徴する「挑戦」する力とそこに自然に生まれる「笑顔」があるからだと思います。笑顔が溢れるところには自然と人が集まり、その輪の中で共感が生まれ運動の大きな原動力となります。私は、青年会議所活動を通じて会員一人ひとりが様々なことを体験し成長の機会を得ることで地域社会において、まちのために活動出来る人財となることが必要だと考えます。また、常に新たなことに挑戦し続け、仲間と切磋琢磨し合いながら成長することで、まち全体の活気が溢れると考えます。我々は、「笑顔」と「挑戦」する力を武器に、次代を見据えた運動を継続しておこない、今まで以上に地域社会から必要とされる組織となりまちから信頼される人財が多く存在する組織を目指して活動していかなくてはなりません。そして、活動の中で青森青年会議所会員が共に成長しながら一丸となり運動を展開することで、青年世代を巻き込みより活気ある組織へと成長を遂げることでまちでは我々の運動に共感する人が溢れ、魅力を感じる市民を多く増やす組織へと変貌を遂げます。


明るいまちの未来を担う

まちの未来を担う子どもたちは多くの可能性を秘めており今後まちの持続可能な発展のために必要不可欠な存在となります。しかしながら、近年の青少年を取り巻く環境は、少子化や核家族化などから人間関係の希薄化が進み地域における交流の機会も減少しています。

そこで家族や学校の友達以外に様々な人とかかわることは、子どもの人とのつながりの範囲を広げ、コミュニケーション能力を育むと共に、自分と考えの違う相手と出会い、違いを受け入れたときにはトラブルを経験しながら子ども同士で解決することも必要と考えます。さらに、子どもたちのことを地域全体で育んでいかないといけないという意識を醸成するために、地域住民と子どもたちがかかわりを築ける機会も同時に創ります。年齢や立場の異なる人々と接することも子どもたちが多様な価値観や人とのかかわり方を学ぶ機会になります。こうした経験により人とのつながりから沢山の「笑顔」が溢れ子どもたちが、将来まちを担う人財となるよう基礎を育みます。

また、我々大人がまちの未来を担う人財と子どもたちに押し付けるのではなく、今のまちを担っているという自覚をもちながら、子どもたちが自ら住まうまちを本気で愛し守りたいと想えるようなきっかけを親世代が作っていく必要があります。我々が住まう青森には各地域で様々な特色を持ち合わせています。その特色を活かし、その地域に根ざした事業を親世代と子ども世代が一緒になり作り上げることで地域への愛着が育まれます。さらに、この過程の中で地域とのかかわりが生まれ、地域社会の交流を活発化することが可能になります。地域全体が一つになり新しいことに「挑戦」し続け未来への希望の「笑顔」がまち全体に溢れ出すように活動して参ります。


まちに受け継がれる

日本を代表する祭りともいわれる青森ねぶた祭。号砲と共に始まり市民の心をじゃわめがせる囃子。大迫力で迫り、観客を圧倒し興奮を与える山車。縦横無尽に跳ねまわり掛け声から一体感を作り出す跳人。そして、祭りの熱気を生み出す観衆。青森ねぶた祭はかかわる者すべてを魅了する青森市に無くてはならない世界に誇る祭りとして多くの市民から愛されてきました。

しかし、観光資源の色が濃くなり昨今では市民離れが課題とされ、さらに追い打ちをかけるかのように2020年2021年は新型コロナウイルスの影響により戦後初めて中止となり市民の祭りへの火が途絶え、まちの活気が奪われました。これからも長きに亘りねぶた祭を後世につないでいくには青森市民にもっと愛され、市民の手によって護り続ける必要があります。しかし、運行団体に加入していない市民は、跳人や観客としての参加になります。我々青森青年会議所はまちづくり団体として、そして運行団体の一団体として青森ねぶた祭が持続発展していくためにも、運行期間のみならず青森市民が、ねぶたにもっとかかわりねぶた祭に愛着を育むことが出来るように、市民がねぶたにかかわる環境をさらに広げ、より多くの市民の熱を結集させることで運動をさらに展開していくことこそが今我々に求められていることと強く感じます。この祭りは、市民の手によって存続されていかなければなりません。

また、地域においても本来のねぶた祭の姿である、地域ねぶたが各所でおこなわれています。これは地域活性化の役割だけではなく、地域の担い手を育成するという観点も含まれております。我々はこれまで大型ねぶた運行で培った経験を最大限に活かし、地域単位で活性化を図れるように取り組むと共に、伝統文化が次代に受け継がれていくことを目指し、青年らしく新しい発想、そしてねぶたを通して市民の方々の笑顔を生み出せるように積極果敢に挑戦します。

今まで以上に市民を巻き込みながら運動を展開することで、ねぶた祭に心をじゃわめがせる市民を増やし、持続可能な祭りとしての姿を確立して参ります。


組織の魅力を磨く

我々、青森青年会議所はまちづくり団体として70年という長い歴史の中運動を展開してきました。しかし、昨今メンバーの減少に拍車がかかり組織の存続が厳しい状況となってきています。我々はいつの時代も生き抜く組織として、新たな価値を見出し次代につなげる運動を展開する必要があります。

我々はこれまで、青少年育成事業、ねぶた出陣事業の2本柱として運動を展開してきました。この二つの柱はまちづくり事業としてまちに認知されてきましたが我々はひとづくりの団体としての側面もあります。2022年は我々の英知を結集し、ひとづくり団体として外部に目を向けた取り組みをおこない、これを青森青年会議所の新たな3本目の柱として広く市民に開き、新たな組織の価値を生み出して参ります。

またここ数年会員拡大が思うようにいかず、年々メンバー減少に頭を悩ませています。  

社業や家庭すべての時間を削りまちのために活動している我々の姿は、身近な人々にどのように映っているのでしょう。きっと、身近な人からはいつも忙しそう、平日も休日も関係なく何をしているのか分からないなど、青森青年会議所へ所属した人でなければ、理解を得られることは難しいことだと思います。人が集う組織は、会員一人ひとりが所属する組織の魅力を伝えることが必要と考えます。まずは、メンバー一人ひとりが、身近な人に青森青年会議所の魅力について自信を持ち、伝えることが出来る人財となる必要があると想います。そのためには日頃からメンバーが楽しみ、我々が改めてJCの魅力に気付き笑顔で活動していけるように取り組んでいく必要があります。メンバーが身近な人に魅力を伝えていくことで必ず会員拡大にもつながると考えています。

青森青年会議所として、新たな柱を立てることは容易なことではありません。しかし、これまで70年という長い歴史を生き抜いてきたのは、地域から必要とされ続けてきた証であります。我々はこれまで培った経験を最大限に活かし新たな価値を見出すことで、これからも長きに亘り存続できる組織であるために「挑戦」し続け、未来のまちの「笑顔」がまち全体に溢れ出すように活動して参ります。


組織を護る

青森青年会議所は、2010年に公益法人へ移行し10数年が経過しました。公益認定を有することは、地域からの信頼を得ている証でもあり、より一層厳格な組織運営が必要になります。昨今、全国的には公益法人であることの是非が検討されるようになってきましたが、本質はこれからも地域に信頼される組織としての在り方を模索し、運営していかなければならないということです。

そのためには、定款・諸規程に定められた内容に沿って適切な運営が求められ、透明性の高い明瞭な財務管理が必要です。そして、規則を守るだけではなく、それを見返し時代や組織の現状に即した更新が求められます。組織の変革を運動面からだけでなく、運営面からも推し進め、常にまちに求められる組織であり続けられる必要があると考えます。

また、青森青年会議所の魅力的な運動を市民一人ひとりに認知するために、積極的な情報発信は欠かせません。WebやSNSは、即座に情報を発信することが出来ますが、我々の情報を得ようとした人にしか発信することが出来ません。我々の運動がもっと広く発信されるには、報道機関との連携や広告媒体を新たに模索する必要があると考えます。また、情報を発信する際にも、ただ単に会議風景のみを情報発信するのではなく、メッセージ性をより強く意識して発信する必要があります。市民意識変革団体として、細かいところからも人の意識を変える情報発信にも積極的に取り組むことで、青森青年会議所のより良い印象が認識されていきます。

時代の流れに即した組織運営は会員のより良い活動につながり会全体の魅力となることで、質の高い運動へと昇華されると共に、情報発信の新たな取り組みから人とのつながりから「笑顔」が生まれ信頼される組織として広く認識されることで、これからもまちに求め続けられる組織となります。


おわりに

私は2015年に青森青年会議所へ入会し、その年に青森青年会議所の柱ともいわれるねぶた事業、そしてスクールにおいて青少年を対象にした事業をきっかけにこんなに面白いことをおこなっている団体があるのかと感じたことを覚えています。 

しかし、当時の私は好きなことだけに参加してただ単に楽しみ、他のことに対しては全て他人事のように感じていたことも確かです。そんなとき自分に気付きを与えてくれたのは、初めて参加した常任理事会で、涙を流しそして熱く語り合う当時現役会員の姿でした。その熱い想いを目の当たりにした私は、どうしようもないやるせなさと、自分自身への愚かさでいっぱいになりこのままではいけないと、今でも心が折れそうになったときに当時のことが頭に浮かんできて活動の原動力となっています。

また、活動や運動を通じていつのまにか、まちに対しての想いが増しておりJC活動以外の活動にも活発に参加するようになっていました。

まちづくりは人づくり。人づくりはまちづくり。どちらにしても、今後のまちにはなくてはならないプロセスであり、それを体現してきた我々青森青年会議所だからこそ、各地域に落とし込みまち全体が明るい豊かな社会となるように築いていく必要があると思います。

「若者」「余所者」「馬鹿者」が世の中を変えていくと言います。若者である私たちが挑戦をやめず、力を結集してまちのためを想う人を増やすことで、私たちの愛するまちをより良く発展させていけることを確信しています。

そんな芽を息吹かせることも我々青年の役割です。いつどうなるかわからない今の世の中まちの未来を考え新たな可能性にみんなで挑戦しましょう。

そして、まちの未来の希望を我々で創りましょう。

未来の希望が溢れたとき、まちは笑顔で包まれると確信しています。我々が立ち上がるのは今しかないのです。やりましょう未来の青森のために。

会報誌「先駆」

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会報誌「先駆」2022年度 第1号
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会報誌「先駆」2022年度 第2号
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会報誌「先駆」2022年度 第3号
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会報誌「先駆」2022年度 第4号
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