公益社団法人 青森青年会議所

理事長所信 第73代理事長 石田 壮平

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スローガン

はじめに

2019年。私は青森青年会議所で初めて委員長という役職を経験しました。私の委員会の目標は、自分のまちに当事者意識をもち主体的に行動出来る市民を増やすことでした。2018年12月の理事会で翌年の委員会の基本方針を決めなければならない中、これをやるとしたら本当に大変だということが分かりながら、そこに突っ込んでいく覚悟を決めた夜がありました。今思えば、この瞬間が青年会議所活動に対して私が本気で一歩踏み出した時だったと感じています。関わりを持ったまちの皆さんと一緒に事業を構築していく中で、私の想像を遥かに超えて自分のまちのために行動する住民の皆さんを前にして、まちはこうして動いていくんだということを実感したのを覚えています。同時に青年会議所の運動というもの、つまり、自分たちだけが動くのではなく、地域・市民が主体的に動くサイクルを生むきっかけを与えることを自分なりに理解できた気がしました。

「協働」、共に心と力を合わせて物事をおこなうことは、私がとても大事だと思う考え方です。私は一人で思い悩むことがよくあります。思い悩み出すとなかなか前に進めません。思い返してみると、そんな時にはいつも、家族や同僚や青年会議所メンバーが一緒に考え、行動してくれ、自分なりのゴールを見つけられました。また、隣で頑張っている姿を見るだけでも自分も頑張ろうという気持ちになり、それが自分だけでは到達できなかった成果につながることもありました。まちは一人では作ることができません。だからこそ、まちの発展においても「協働」という考え方はとても重要だと考えています。

今地域に求められる人財

2020年に、青森青年会議所で実施した青森市および東津軽郡を対象とした市民意識調査によれば、約7割の市民が地域にリーダーが不在だと感じているということがわかりました。地域のリーダーのイメージは人によって違うと思います。例えば、規模感という観点では、市町村全体かもしれないし、ある町会かもしれないし、自分の所属組織・団体かもしれません。また、リーダーがおこなうことという観点では、新しい事に挑戦することかもしれないし、伝統を継承することかもしれないし、町や組織を運営することかもしれません。

私たちが住み暮らす青森では、地域を良くしようとする多くの取り組みがおこなわれています。自分の家の近くのゴミを拾うことや、町会の祭り、市民向けのイベントなど探せばいつもどこかで地域を良くしようとする取り組みがおこなわれていると言っても過言ではないでしょう。青年会議所会員として、また、一人の市民として、地域をよくしたいという想いをもっている人、さらにはその想いを行動に移している人にたくさん出会いました。皆さんとのお話の中で、私自身も刺激を受け青森のために頑張ろうと改めて思うことがありました。地域のことを本気で考え、行動している人はたくさんいるのです。

では、なぜリーダーが不在だというイメージがもたれているのでしょうか。地域のことを本気で考え、行動している人はたくさんいます。ただし各人のまちに対する想いや、そのための考え方・行動方法は人によって異なります。それ自体は当たり前のことですが、各人がそれぞれの想いのもと、それぞれの行動をおこなった結果、人間関係の綻びや責任の押し付け合いなどが起こり、取り組みが縮小する場面や、気持ちよく取り組むことができない場面を目の当たりにしたことがありました。それぞれの想いや行動を前向きに受けとめ2022beliefることができれば、個人で行動するよりも良い結果が生まれるはずなのに、と思うことがありました。私は、一人ひとりの想いを受け止め、皆が共感するゴールへ導く人のもとに協働することできれば、もっとやりがいのある、地域にとっても有益な取り組みがおこなえると確信しています。協働して取り組むことの大切さを体感すること、皆が共感するゴールに導く人が増えることで、リーダーが不在というイメージは払拭されると強く思います。

地域のまとめ役となる人財を育てる青年会議所

青年会議所の理念として、JC宣言の一節には「輝く個性が調和する未来を描き」との記載があります。また、地域の需要を割り出し、誰の考え方と行動を変えなければいけないのかの解決策を策定し、協力団体と共に行動を起こしながらも検証をおこなうJCIアクティブシチズンフレームワークなど地域のまとめ役となれる資質を向上させるたくさんの機会があります。また、青年会議所の事業では、地域住民や他の地域団体と共に作り上げる機会がたくさんあります。青年会議所の運動は、必然的に私の考える想いを持って行動する人たちがそれぞれで行動してしまっていること、各人の想いを受け止め、まとめる人財の不足という地域課題の解決につながっていくと考えます。

2023年度の青森青年会議所は、これまで実践してきた、柔軟に新しい概念を取り入れていくこと、その一方で良い伝統を継承していくこと、また、地域の未来のリーダーとなる青年会議所会員の育成という観点から、地域へ「協働することの大切さ」を伝えると共に「一人ひとりの想いを受け止め、皆が共感するゴールへ導く」人財の必要性を訴えていきます。

未来に不可欠な概念に協働して取り組む
《環境》

近年、日本全国で何十年に一度という規模の豪雨災害が頻発しています。我々の住む青森も例外ではなく、私自身も災害ボランティアに参加し、豪雨による土砂崩れによって倒壊した家屋を目の当たりにして、自然に対する私たちの無力さを痛感しました。同時にいつ自分の住む地域で同じような災害が起こってもおかしくない時代であることを実感しました。地域の未来を担う私たちの世代や子どもたちの生活を守るために、災害が起こらないまち、起こっても安全なまちを目指していかなければなりません。災害時の行動として自助・共助・公助があります。青年会議所等の地域団体は共助・公助の段階で、実際に現場で活動をおこなう機会があります。しかしながら、組織として、どのタイミングで、どのような連絡体制で、どこと連携し行動をおこなうのかは明確になっていません。いつ起こってもおかしくない災害に対して、起こったときに地域に対して最も効果的な行動ができる体制の構築は急務です。

また、同時に未来に向けて災害をこれ以上増やさないための取り組みも重要です。近年政府は、骨太の方針の重点施策の一つとしてグリーンという言葉を表記し、2020年には、2050年カーボンニュートラルを宣言し、これ以上地球温暖化を進展させないために温室効果ガスの排出量の実質ゼロを2050年までに達成する方針を打ち出しました。我々の住む青森においても、行政による青森市地球温暖化対策実行計画や、複数のNPO法人等が地球環境に関する活動を展開しています。しかしながら、行政や地域企業へのヒアリングによれば、地球環境への市民の意識は高いとは言えない状況であり、活動する組織が連携して様々な側面から私たちの持続可能な生活のために地球環境に対する理解を促す取り組みが必要不可欠です。

2023年度、災害が起こったときの対応とこれ以上災害を増やさないという二つの観点から、組織・団体が協働して地域全体で環境に取り組む市民の意識が変わるきっかけとなる運動を展開して参ります。そして、この機会を契機に組織・団体が今後も協働して地域の環境意識の向上に取り組んでいく土壌を作ります。

協働する経験で伝統の担い手を作る
《ねぶた》

どんな地域にも祭りは存在しています。
我々が住み暮らす青森には世界に誇る青森ねぶた祭があります。青森ねぶた祭への出陣を通して体感する青年会議所の三信条「修練」「奉仕」「友情」。青森青年会議所として欠かすことのできない活動であると思います。祭りが近づくにつれてその音色を聞くだけで体が熱くなり、運行日には、その感覚はピークを迎えねぶたという一つのものに対して関わる人全員の想いが爆発します。また、各地域では、地域ねぶたがあります。地域ねぶたは携わってきた多くの先人の想いの結晶であり、その想いを受け継ぎながら現在の地域住民がさらに想いを紡いでいく特別な機会です。また、一人ではおこなうことができないものであり、地域住民が共に行動して地域が一つになれる最も最適な機会の一つです。

ねぶたについては、近年担い手不足という課題が叫ばれています。2020年、2021年と新型コロナウイルス感染症の影響で、青森ねぶた祭は中止となりました。そして2022年に3年ぶりに開催した青森ねぶた祭ですが、運行団体はコロナ禍以前より少なく、コロナ収束後もすべての運行団体が復活できないことが危惧されています。その一要因として担い手不足という課題があることは確かです。また、地域ねぶたについては2019年は町会をはじめとする70箇所で運行されていましたが、2022年は33箇所となり、休止ではなく今後の運行を取りやめる地域もあるのが現状です。

この担い手不足の課題を解決できる糸口は、ねぶたに興味があるけれど、どうやって参加すれば良いかわからないという市民が一定数いるということ、またサポートがあれば地域ねぶたを継続・復活させたいという想いがあることです。2022年度に青森青年会議所は青森ねぶた祭への出陣に際して地域班という役割を作り、青年会議所のねぶた運行に一緒にかかわる窓口を作りました。結果として60名以上の市民に地域班として当日の運行に携わっていただきました。また、青森青年会議所として2箇所で地域ねぶたの運行支援を行い、地域ねぶたの継続と復活に携わることができました。この地域班、地域ねぶた支援の取り組みは担い手育成に一定の効果をもたらしたと感じましたが、まだまだできることがあると思います。地域班については、当日の運行のために、出陣団体がどんな想いをもち、どんな役割分担でどんな準備をしているかを理解してもらうことで、よりねぶたを好きになり主体的な行動を促すことができます。また、地域ねぶた支援については、地域に住む方々、特に未来を担う若者や子どもたちにねぶた文化を伝えることで、地域におけるねぶた熱を盛り上げることができます。

2023年度は、昨年度からスタートした地域班、地域ねぶた支援の取り組みをブラッシュアップし、これまで以上にねぶたに携わる機会を作り、協働してねぶたを作り上げていくという経験を多くの市民と共に実現し、これからのねぶたに主体的にかかわっていく人財作りに取り組んでまいります。

想いを受け止め、まとめる人財を作る
《会員拡大と新入会員育成》

私が入会した2017年は60名以上いた会員は、2022年のスタートは29人まで減少しました。会員数の減少にコロナ禍という情勢も重なり、一緒に活動をおこなう機会は減り、会全体として一致団結して取り組む意識の形成が難しいと感じる場面が何度かありました。そんな中2022年には18名の新入会員を迎える事ができました。活動の中で、異なる背景をもつ会員からたくさんの意見をもらえることや、単純に様々な人と話をすることでの見聞の広がりはとても重要であることを改めて実感しました。協働の効果を向上させるために、会員数の増加はとても重要な要素です。

青森青年会議所の運動は常に誰かと手を取り合い何かを作り上げるものであり、地域の課題解決にあたって独りよがりではいけない、今の地域に合致した答えを導き出さなければなりません。そして、新入会員の年に、地域課題に対して協働して解決する体験が、以降の青年会議所活動の土台を作るうえでとても重要です。私自身、新入会員として入会した年に、新入会員が一つの事業を作り上げるという機会があり、この経験は以降の地域住民や同じ地域に存在する団体と連携し事業をまとめ上げていく事業構築の土台になっています。

2023年度は一人でも多くの会員を青年会議所に迎えると共に、協働して事業を作り上げる体験を通して、以降の青年会議所活動への土台となる機会を提供してまいります。

地域に協働することの大切さを伝える
《青年会議所の運動の発信》

青森青年会議所の運動は協働すること、また一人ひとりの想いを受け止め、皆が共感するゴールへ導く人財の育成そのものです。つまり、青森青年会議所の運動を的確に発信することができれば、協働することの大切さを地域に伝えることにつながります。

2020年におこなった市民意識調査によれば5割超の市民が青森青年会議所の存在を知らないという結果が得られました。直接やりとりのあった市民・団体からは以降の末永い信頼関係を築ける青森青年会議所ですが、それが、地域全体に広がりきらないのはなぜでしょうか。一つの要因は、事業の構築で手一杯になり、青年会議所の運動として地域に成果を発信していくことが後回しになっていることです。まずは最低限、タイムリーに情報発信をしていく必要があります。もう一つの要因は、結果や事実のみを伝えているということです。情報過多の現代においては、どれだけその情報に興味や共感を生み出せるかが重要であると考えます。この事業はどんな問題意識でおこなわれているのか、どんな想いでどのように事業を構築したのか、結果としてどんな成果が生まれたのか等を、ストーリー性をもって伝えることが必要です。

2023年度は、タイムリーな情報を、ストーリー性をもって伝える広報を展開してまいります。

協働して進化する青森青年会議所の土台づくり
《組織運営》

青年会議所は、20歳から40歳までが会員となれる組織です。この特徴を活かし、地域にとって青森青年会議所は、地域の未来を担っていく若者の集まりとして、時代に必要となる新たな概念を、いち早く地域に取り入れることに挑戦するエネルギーに溢れた組織としての存在を担っていく必要があります。定款・諸規程をはじめとする活動のルールを見直しながら、変化する時代への対応として、コロナ禍においてWebを活用した会議・事業や、ペーパーレス化等もいち早く取り入れて参りました。

さらに、青森青年会議所は、結果だけではなく過程の議論を重要視すること、月1回の例会では青年会議所の存在意義や運動の方向性を毎回確認すること、会員同士の交流・懇親の機会を作ること等で、同じ想いをもって青年会議所活動をおこなう意識醸成をおこなってまいりました。

しかしながら、コロナ禍を経験し、対面で会員が集まる機会が著しく減少している昨今、Web会議においては議論が活発化しづらく、会員同士の交流・懇親の機会の減少により同じ想いをもって活動をおこなうという意識が希薄化していると感じる場面が散見されるようになったと感じます。同時に、対面での会議の休憩時間中や懇親会の際に、何気なく語られる、次の事業についての考えや、青森青年会議所に対する想いの重要性に気づかされました。2023年度は、定款・諸規程をはじめとする活動のルールをタイムリーに改善し、会員に共有することはもちろん、意識的に会員同士の交流・懇親の場を作り、今まで以上に協働して運動を展開する土台作りをおこなってまいります。

他青年会議所の協働し成長する
《出向と大会参加》

青年会議所には出向という制度があり、県・東北地方・全国レベルで、他の地域の青年会議所会員と共に事業を作り上げていく機会があります。私自身もこれまで3回出向を経験しました。青森にいるだけでは出会えない人と絆を育むことや新たな情報を得ることなど多くの学びがあること、他の地域に触れることで地元青森の良さを再認識できることなど出向には多くの価値がありますが、私が一番感じたのは、他の地域の青年会議所メンバーの青年会議所運動に対する情熱・努力を肌で感じることによる、青年会議所運動への自分自身の意欲をもう一段高められる機会であるということです。自分の実体験として出向は自分自身の成長に確実につながったと確信しています。そして、この成長を他のメンバーにも実感してほしいと思います。

また、青年会議所には上記の県・東北地方・全国レベルでの大会が毎年実施されており、世界・日本・東北という広い視点での課題やそれに対する運動を学ぶ機会や、他青年会議所会員との交流の機会があります。さらに、青森青年会議所は、2024年度に東北地方の大会である東北青年フォーラムの開催地に立候補いたしました。青森青年会議所はこの機会を東北の中での青森のPRはもちろんのこと、我々が活動する青森地域の方々へ感謝を体現する場、そして地域の中でこれまで以上に当会の信頼をより高める場、また、青森青年会議所会員の絆をこれまで以上に深める機会と位置付け、東北青年フォーラム開催以降の青森青年会議所の地域での存在感の向上と会員のさらなる拡大につなげていきたいと考えております。加えて、2023年度は青森ブロック協議会の会長を当会から輩出し、青森県レベルの課題を解決する運動をリアルタイムで目の当たりにできる機会があります。

2023年度は出向や大会参加に対して連携の取りやすい環境が整っています。この環境を最大限活用し、会員が他青年会議所と協働し、成長する機会を作ると共に、その成長を会に還元することで青森青年会議所のさらなる進化を目指してまいります。

おわりに

2017年に、青森に戻ってきて3年ほど入会の誘いを断り続けていた私は、仕事にも慣れ、青森における自分自身のネットワークを広げること、また、もともと好きだったまちづくり活動に参加したいという想いで青森青年会議所に入会しました。同じ年に入会したメンバーと協働して作り上げた事業の経験が、私の一生の仲間作りの始まりでした。

2018年。私は事務局に配属され、当時は、その一時のことをこなしていくだけでしたが、振り返ると青年会議所が何をする団体なのかを学ぶことができた1年でした。

2019年。私は委員長を経験しました。地域の人と協働しておこなうまちづくりの重要性と楽しさを実感しました。

2020年。青森青年会議所の70周年準備室長として、市民の意識調査を実施しました。地域にはリーダーが求められており、青年会議所の必要性を改めて認識しました。

2021年。専務理事として、会全体を運営に携わりました。コロナ禍真っ只中で、どうやったらできるかを考えることが多かったですが、諦めないことの大切さを学びました。

2022年。副理事長として、拡大・新入会員育成に取り組み、多くの人数で話し合い、交流することの必要性を実感しました。また、東北地区協議会の議長として、カーボンニュートラルの推進に取り組み、地球全体で取り組まなければならない課題を認識し、また、出向の意義を実感しました。

私の6年間の青年会議所活動のすべてが2023年度の運動に生きています。

協働するまちでは、自然に対話が生まれ、前向きなアイディアが飛び交います。そしてそこから斬新な発想や最適な解決策が生まれます。前向きな市民の活き活きとした表情はまちを明るく照らします。

そのきっかけを作れるのは青年会議所です。2023年度、協働するまちへの発展が始まります。

会報誌「先駆」

会報誌「先駆」

会報誌「先駆」2022年度 第1号
https://aomorijc.or.jp/sakigake_2022vol1/
会報誌「先駆」2022年度 第2号
https://aomorijc.or.jp/sakigake_2022vol2/
会報誌「先駆」2022年度 第3号
https://aomorijc.or.jp/sakigake_2022vol3/
会報誌「先駆」2022年度 第4号
https://aomorijc.or.jp/sakigake_2022vol4/