公益社団法人 青森青年会議所

理事長所信 第74代理事長 岡島 裕史

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【スローガン】
形影相同
~自らを律し行動しよう~

はじめに

 爽やかな澄んだ空気、綺麗で美味しい水、津軽の言葉が行き交う人の流れ、不本意ながらも2014年に青森に帰ってきた私は故郷に対する懐かしさと安心感に包まれたことを今でも覚えています。2015年春、父の逝去に伴い会社を継ぐことになり今まで経験のしたことのないプレッシャーを感じ、それを打ち消すかのように我武者羅に自社の仕事だけに打ち込んでいました。次第に私は本当に青森に自分がいる存在意義はあるのか?本当に自分の会社が青森に必要なのか?そのような想いを巡らせることがありました。そのような中で出会ったのが青年会議所でした。青年会議所では、様々な分野で活躍しているメンバーとの出会い、そして、共に活動することが、自己の成長につながり自分の身近なところだけでなく、広い視野で社会を見渡し考えることができるようになりました。これらの経験が私自身の閉塞的な感情を打破し、青年経済人として大きく成長させていただいたと今でも実感しています。
 自分を見つめ直すことが出来、ふと周りを見渡してみると私の友人の多くは青森にいませんでした。たまに会う県外の友人に青森に帰る気はあるのか尋ねると逆にどうして青森にいるの?と聞き返されることが多々ありました。友人も青森が嫌いで話しているわけではないことは分かりますがその言葉を聞くたびに段々と寂しい気持ちになりました。それは、私はまちづくりを通して前よりも青森に興味を持ち、青森のことを好きになっていたからに違いありません。まちの未来を考えられるようになったとき、私はまず、友人たちのように青森を去った人々がどうしたら青森に帰ってきてくれるかを考え始めました。

青森の未来を想い

 全国的に地方からの人口流出は止まらず、ここ青森市でも特に若者の流出が顕著にみられ由々しき問題となっております。住まいを提供する産業に対して情報提供を行っている調査機関のデータによると、特に離脱意向率、つまり、出ていきたいと思っている人の割合に関しても青森県は全国で4位ととても高い順位となり、これからも若者の流出が止まらないことを示唆しています。しかし、すでに出ていってしまった青森県出身者に関する、地元に貢献したいか、ボランティアをしたいかという関係意向率という項目を調べてみると全国的に順位が20位台につけており、離脱意向率に比べると断然良い順位であることが分かりました。このことから、青森のことは好きだが青森を出ていきたい、もしくは、青森に帰りたくないと思っている人が多くいることを示していると考えられます。確かに、若者の流出はとても大きな問題ですが夢を追いかける若者を引き留めることは出来ません。我々は、夢を追いかけ大きく成長した若者たちが青森に帰ってきたくなるような魅力のあるまちを作り上げる必要があります。
我々の住む青森は、世界遺産である三内丸山遺跡があり、中世からの港町として発展し近代では北海道と本州を結ぶ重要な港湾都市として栄え、そして世界に誇れる祭り、ねぶた祭りが長い年月継承されているという歴史と文化を大切に守ってきた都市です。このように歴史や文化がきちんと継承されている地域は集団凝集性が高く、それゆえにもともとその土地に住んでいる人々の帰属意識は高いものとなります。その結果、義理や人情を大切にし、その強い結束力で今では多くの人を魅了する歴史や文化、そして、豊かな自然を守り続けてきました。そして、今以上に青森市の凝集性を高め、それを魅力へと昇華させることがこのまちに生きる我々の責務であり、それがおのずと青森の魅力を高めていくことだと私は信じています。
 それと同時に考えていかなくてはいけない指標に寛容性があります。凝集性が高い地域では、狭い範囲での人間関係が濃密になることと、誇りを重んじる気質のため、排他的な思考になり、仲間意識が強いがためにその中に入れなかった人々が離脱意向になり、結果人口流出が増えていると人口動態の研究を行っている大学等の研究機関で指摘されています。我々の住む青森市も例外ではありません。 他者を受け入れる姿勢、外からの人を分け隔てなく歓迎する姿勢が備わっている地域は寛容性が高く、寛容性の高い地域は離脱意向率が低く、Uターンしたい人口も多いことが人口動態の研究を行っている大学等の研究機関で分かっています。青森市はこの寛容性の値が全国と比べるととても低い水準にあります。この状況を打破するためには、排他的な思考の転換と、青森市に住む我々市民の外からの人々を受け入れるための意識改革が必要です。そうすることにより、青森に住み暮らす人々の寛容性が向上し、住みやすい地域、訪れたい地域という魅力に変わります。これらのことから、これからの青森にはこの凝集性と寛容性のバランスがとれたまちが求められています。まずは青森に住む人々がこのまちを愛し、そして、今このまちに住んでいる若い世代、そして、青森から出ていった青森出身者に、青森が好きだから必ず帰ってきたいと言ってもらえるような、青森を愛する仲間が一丸となって青森を盛り上げる凝集性と、偏見や排他的な思考をもたず誰もが助け合い協力し合う寛容性の兼ね備えたまちを目指していくことが必要です。

模範となれる青年として

 我々の行う運動、活動は地域の皆様からの理解、賛同を得て、初めて多くの人々に広がり目的が達成できます。地域の皆様から信頼を寄せていただくためには、まず我々の行動を見直さなければなりません。我々は自らを律し行動することで、子どもたちの、そして、若者の模範となれるように行動しなければなりません。
 今年度のスローガンは「形影相同~自らを律し行動しよう~」とさせていただきました。形影相同は、形が曲がれば影も曲がり、形がまっすぐであれば影もまっすぐであるように、心が正しければ行いも正しいという意味があります。ここで私が強調したいことは心の善悪が行動に出ることです。自らの欲に負けず、己を律し、事象の善悪を良く判断しながら行動していかなくては人々の模範となることは出来ません。今年度は、今まで以上に法令遵守だけでなく、倫理観、公序良俗などの社会的な規範に従い、公正・公平に青年会議所として活動していけるように会員全員でコンプライアンスについて学んでいきます。

多彩な交流が地域を守る

 人は他者との交流の中で、ルールを守ることを覚え、他者の気持ちに寄り添うことを学びます。特に、子どもの頃の世代を超えた交流は年代の違う人、価値観の違う人など多様性を学ぶ機会、すなわち寛容性を高める良い機会となります。また、交流の中で連帯感が生まれ、親世代から多くの愛情を受けて育った子どもたちはその地域への愛着が育まれ凝集性を高めることが出来ます。
 しかし、現状を見てみると子どもたちの地域での交流は部活動からクラブ活動への転換や夏祭り等の行事の廃止、オンライン授業の普及など形が変わってきており、人と人とが交わらなくても不自由なく生活でき、その結果、世代を超えた交流が地域によっては薄れてきているのが事実です。また、地域の中での交流自体が軽薄になるにつれ、コミュニティの担い手の継承がおこなわれず、結果として地域運行ねぶたや地域の祭りのような地域最大の伝統でもある交流の場が引き継がれません。これらの事象が仲間意識の低下や愛着の喪失、そして最後には地域コミュニティの崩壊ということも引き起こされる可能性があります。
 我々は、青森に住み続けたい、将来青森に帰ってきたいと思う若者を増やせるように地域での交流の仕掛け役となり、子どもたちを中心に人々が盛んに交流し寛容性と凝集性を同時に高められるように行動して参ります。寛容性と凝集性を身に着けながら成長した子どもたちは大人になったとき、地域コミュニティの中心的な役割を担いもっと若者が戻ってきたいと思えるような地域を作り上げます。

東北青年フォーラム開催地として

 2021年に東北青年フォーラムの開催地として立候補いたしました。そして、無事審議をいただき晴れて2024年東北青年フォーラムをこの青森の地でおこなうことが決定しました。東北青年フォーラムはその年の東北地区協議会の運動の最大の発信の場であり、その重責を担えることは青森青年会議所全メンバーのまたとない経験となります。特に責任感を強くもち東北各地のメンバーと交流することで得られる経験は必ず個人の成長につながります。
 また、東北地区協議会最大の発信の場であると共に、青森の魅力を東北全地域に発信する最大の機会となります。そのために全メンバーで青森の魅力とは何か、どう伝えればより魅力を感じてもらえるか再確認する良い機会として私は捉えております。大会に訪れた多くの青年会議所メンバーによる経済効果だけでなくしっかりと青森の魅力を発信することで青森の素晴らしさを東北全土に認知してもらい継続的な経済効果をもたらせられるように邁進してまいります。
 そして、今回のフォーラムでは、青森ブロック内各地会員会議所との連携をより深められる大会にしたいと思っております。主催主管LOMとして責任を全うするとともに副主管の職務を全うしていただけるよう青森ブロック内各地会員会議所の皆様にしっかりと協力をお願いし、青森市の魅力と共に青森県としての魅力も最大限発揮していきたいと考えております。青森の魅力と共に、青森の人の心の熱さを最大限に伝えられるよう青森青年会議所一丸となって取り組んで参ります。

社会的信頼を得られる組織となるように

 青森青年会議所はその在り方を健全でかつ透明性を持った団体であるべきとして定款・諸規程を柱にして運営を行ってきた団体です。しかし、在籍会員数の減少と長きに渡る新型コロナウイルス感染拡大の弊害で効率化を求めていった結果、本質を忘れ、おざなりになっている部分があることは反省しなければなりません。地域から必要とされる団体として存在していくためには、まずは、我々一人一人の行動を見直し、自分たちが青森青年会議所に所属している一員だということをしっかりと理解し、青年経済人として、そして、青森に住まう大人として模範となるように意識高く行動しなくてはなりません。そのため、定款・諸規程に書かれてある内容はもとより、青年会議所に対する基本的な知識を学び理解する機会を提供することが必要であり、それらをきちんと学び時代に合った形に変えていかなくてはいけません。健全な組織であると地域の人々に認識してもらうために、まずは、運営面での健全化を図り、会員一人一人に深く落とし込む必要があります。社会的信頼を得た我々の運動は、より多くの市民の共感を得ることが出来、同じ志をもつ仲間を増やすことが出来ます。多くの同志とおこなう運動はより大きく広がり、青年が活発に活動する明るく勢いのあるまちを創ることが出来ます。

社会的信頼を得られる組織となるように

 地域に根付く組織とは地域の皆様の信頼によって存在出来るものだと改めて感じております。青年会議所が存在しているのも、自分の会社が存在しているのも、そして、我々が生活しているのも地域によって成り立っていることを忘れてはいけません。本年度は、もう一度地域への貢献について会員一同学び直す機会にしたいと考えています。地域を良くしていこう、地域を変えていくのは我々だという気持ちも大切ですが、まずは原点に立ち返り、地域の皆様が強く求めているもの、望んでいるものと我々青年会議所が追い求めている地域の未来像がずれることがないように活動していきます。そして、地域から信頼され、この地域になくてはならない団体だと認識していただけるように、関係各所並びに先輩諸氏の皆様からご指導ご鞭撻いただきながら会員全員で切磋琢磨していきます。